『インセプション』

 昨日のレイトショーで『インセプション』観た。面白かった! 以下、とりとめのない感想。ネタバレ注意。





 単純化してしまえば、要するにこの話は「我々が現実と思っているものは、実は現実ではないのではないのか」という内容。その問いが、ラストで視聴者に強烈に突きつけられているわけだよね。かつてコブの妻であるモルが自殺したとき(これも果たして現実かどうか、もしかしたら彼女がいっていたことが正しいのではないか)にコブにいったセリフを、今度は虚無の世界でサイトーにいうコブ。そうして帰ってきた子どもたちと会う世界は、果たして現実かどうか。ラストはいかようにも解釈でき、深読みしようと思えばいくらでもできそう。個人的には現実世界でいいじゃんと思うが、どう解釈してもこの映画のテーマそのものは変化しないだろう。でも、このラストがあるからこそ、この映画は余韻が残り、心に響くんだよなあ。

 ところで、この映画を観ながら、いくつかの物語を思い出していた。まず、真っ先に思い出したのは最近3Dで話題になった映画『アバター』。あの映画を、僕はリアルを捨て、バーチャルリアルで生きることを決意する人の物語と受け取っているんだけど、『インセプション』はまさに「現実に戻るべきかどうか、このままバーチャルな世界で生きていってはいけないのか」を話の中心に置いている。また、無意識・潜在意識(しかも自分の)に潜っていくのは村上春樹世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』。何が現実で何が夢かというテーマは押井守監督の『うる星やつら ビューティフル・ドリーマー』。当然、無意識へのダイブで同じく押井の『攻殻機動隊』も連想するよね。あと、コブと妻がともに年老いた(これもコブの創り出した幻想?)という辺りから、ケン・グリムウッドの名作『リプレイ』も。一度生きた人生をもう一度生き直すのは、とても過酷なことだろう。その意味で、妻が現実で目覚めたときのショックはとてもよく分かる。そういえば、最初の日本風の家屋はタランティーノ監督の『キル・ビル』みたいだった。途中で栗原千明が出てくるかと思ったよ(笑)。

 僕がこの映画が面白いと思った最大の理由は、上述の「バーチャルな世界で生きる」という点。エヴァ花沢健吾の『ルサンチマン』、東浩紀の『クォンタム・ファミリーズ』、ゲームなどで展開された『.hack』シリーズなどと絡めて、そのことをを一度どこかでがっつり論じてみたいと思っているが、果たしてそれはいつの日になることやら。