今日読んだ本

異邦人 (新潮文庫)

異邦人 (新潮文庫)

 生死と宗教の問題をニヒリスティックに考察する主人公。後半に進めば進むほど、物語のなかに吸いこまれていく。「われわれはすべて死刑囚なのだ」とはこの本のなかのよく知られた名言だが、今回読んだときはこんなことばが胸に響いた。
「人間は全く不幸になることはない、とママンはよくいっていた。空が色づいて来るときや、暁のひかりが私の独房にしのび込んで来るとき、ママンの言葉はほんとうだと思った。」
 また、ラストの部分も胸に響く。
「すべてが終わって、私がより孤独でないことを感じるために、この私に残された望みといっては、私の処刑の日に大勢の見物人が集まり、憎悪の叫びをあげて、私を迎えることだけだった。」
 たとえ憎しみでも、その人に対する関心が向けられているという点では、孤独よりましである、ということだろうか。いや、引用部分の直前にあるように、「世界」が自分に対して「優しい無関心」をみせてくれ、孤独になったとき、自分自身が「生きかえ」り、初めて本当の自分が生まれる、ということだろう。心に孤独を持ったとき、初めて人は「幸福」になる術を知る。