伊坂幸太郎『ゴールデンスランバー』

ゴールデンスランバー

ゴールデンスランバー

 何の関係もないのに、首相暗殺犯に仕立てあげられてしまう主人公。テーマは国家権力の怖さではなく、人間はいかに生きるべきか、真の信頼とは何か、ということ。逃げ続けた先に存在する人生もあるのだ、ということを実感させてくれる小説。
 読んでいる最中は面白かったが、読み終えてから振り返ってみると、ちょっと作り込みすぎていて、伏線の張り方&使い方がかなり強引だと思った。また、国家権力なるものにほとんど踏み込まず、個人レベルの問題で作品が収斂していくところに、物語としてのスケールの小ささを感じた。国家が強いる負担や犠牲のなかで得られる幸せが「幸せ」だなんて、絶対に思ってはいけない。